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「NHKにようこそ!」滝本竜彦著

道がある。この道の先には何があるのだろう。
好奇心。
でも道に規定されたこざかしい好奇心がどれほどのものか。

誰かさんが言った。
道がなければ自分で作ればいい。自分の進んだ跡がやがて道となる、とさ。
勇ましい。
でも私は誰かを新たな道へと導く気もないし、道なき道を踏み砕いて歩きとおす強靭な足腰、不屈の気概など毛頭ない。

誰が道を作ったかなんて知ったこっちゃない。幾千もの足によって何万回と踏み慣らされた平板な道、その道を歩いていると、周りにいろんなものが見えた。道行く人をそれなりに楽しませるためにしっかり景観は整えられてる。私もみんなと同じようにそれを楽しんだ。同じものに心を浮き立たせているので会話も弾む。

でも少し目をそらせば、名づけようもない雑多なものもまたある。景観にそぐわないから、ゴミのようなそれらをみんなはしゃかりきに掃除しているけど、なくなりはしない。私は道端に座り込み、路傍の石となってそれらを眺めた。珍妙な行いに、みんなが怪訝な顔を向ける。私は作り笑いで返す。それで十分だ。いずれみんな私を置き去りにして前へと歩き出す。道は前へ進むためにあるのだから。みんなが快適に、楽しく歩きたいと思ってる道。道の先に思い思いの意味を打ち立て、それに向けて歩き出す。

私は道を歩き出すこともなく、さりとて道を踏み外すわけでもなく、道の周囲に雑然となっている大小さまざまな塵芥を眺めるだけだ。道から外れるのを恐れて、身を乗り出してそれらに近づこうともせずただ見つめるだけ。気になって気になってしかたがないだけ。



今回、ご紹介する本は
「NHKにようこそ!」滝本竜彦著 角川文庫
えー、ひきこもり小説です。粗筋を一言で要約すると、「ひきこもりの青年が可愛い清純な女の子に心を洗われ救われ、地獄のひきこもり生活から抜け出しハッピーエンド」という感動のお話です。ウソ。いやまったくデタラメというわけでもないけど・・・。

読書を三種類に分類してみよう。
1 これぐらい知っておかなくちゃ、というある種の強迫観念、見栄から読書
2 張り詰めた精神を緩ませるために気晴らしの読書
3 心にひっかかり吸い込まれるように文字を追う読書

現実の読書はこれら三つが混然としたものでしょうけど、この作品は最終的には3に落ち着いた。

滝本さんのデビュー作「ネガティブハッピーチェーンソーエッヂ」(角川文庫)を読んだ。そんなに入り込めなかった。つまらないというわけではない。つまらなかったら最後まで読むことはない。でも、体の奥からゾクゾク身震いする感慨というものはなかった。で、今作。前作がこんなもんだから期待はそんなにしてなかった。実際、読んでも出だしは上々だけど中途中だるみで淡い退屈感。されど終盤グサっと心をつかまれた。ずしりと重く響く何かがあった。何があったのだろう。

肝心の小説の中身については実際に手に取ってみてください。そのほうがいいです。私も中身そのものを書く興味があまりないので。むしろ小説に触発されてふつふつと生まれたもやもやを書きたい。


ひきこもり
この言葉を、長期間家に篭城して一歩も出ない、という文字通りの物理的な意味にとどまらず精神的な意味にまで敷衍するなら、この言葉にあてはまる人は大勢いるかもしれない。そこまで言葉の範囲を広げるなら、私自身もその一人に当てはまること大です。全然社交的じゃないし、当意即妙な会話なんて到底おぼつかない。会話のストッパーとしての能力は大魔神佐々木にも勝るじゃないか。独り言のようにごにょごにょと、はっきりしないかぼそい声で会話するのが関の山。他人を寛大に受け入れることのできる器量なんてこれっぽちもない。

力の加減を知らない、そう思う。外交的になろうとして力の限り頑張れば、それなりになれるかもしれないけど、「力の限り」という言葉が示すように力みすぎて、はっきりいって安定して持続できるようなものでもない。ゼロか、百か極端なのだ。相手が異様さを感じて引くほど猛烈に外交的にでるか、まったく自分の内部に閉じこもってしまうか。ほどほどがわからない。というかほどほど、って云ってる時点で人との会話を全くわかってないアホナスだ。

そういう力の加減を知らない、どう力を使っていいかわからない人間が主人公の小説が、この「NHKにようこそ!」でした。



「見えない敵」、これは前作「ネガティブ」から引き続くモチーフ。

有史以来、人類は戦い続けている。戦争している。それが肯定されるにせよ、否定されるにせよ戦争するには敵が必要だ。ではその人類の末裔たる私達の敵、戦う相手はどこにいるのか。戦争自体が無意味だったとしても、その戦争の最中、敵を攻略する策を練ったり愚弄する言葉をひねり出したりすることに一心不乱、敵を倒す、という一点に向けておのが体の可能性すべてを投げ打つことに集中する時、そこにはなにがしかの充実感があるのは確かではないだろうか。無我夢中、その忘我の境地は心にハリと安定をもたらす。

岬ちゃんに敵がいるなら、自分を責めることもない。自分が苦しむのをそいつらのせいにすればいい。その敵の存在、すなわちNHKの存在を証明するために佐藤君は暗闇の日本海へダイブしようとする。

こんなまわりくどい、ややこしいでっちあげをしなければ敵を見つけることができないほど世の中複雑になった。そして私は「複雑」という月並みな言葉しか浮かばない自分の頭にガッカリする。


救う
昔友達にこう言われたことがある。「人が人を救うことなんてできない、人が人を救うことができると考えるなんておこがましいにもほどがある」記憶があやふやだけど、このようなことだったと思う。こう言ってのけた友達の迫力に身震いしたものだ。私は返す言葉もなかった。

そしてこの言葉が、自殺しようとする岬ちゃんを思い止まらせようと煩悶し途方に暮れる佐藤君の姿と重なるのだ。人が人を救うことはできない、だったら人あらざる"奇跡"を起こすしかない、そして佐藤君は意を決してダイブを敢行する。

人を救いたいと思ってる人間は、実は自分が救われたいと思っている。これは最初は岬ちゃんの佐藤君に対する態度、それが反転して最後は佐藤君の岬ちゃんに対する態度にちょうど重なる。

救うだの、救われたいだの鼻白むたくなるキナ臭さと一生無縁な人もたくさんいるかもしれない。でも私は目を背けて生きることは無理かも。



蛇足
勢いに乗って滝本さんの三作目、エッセイ「超人計画」(角川文庫)も読んでみた。少し抵抗があった。だって、表紙がドラえもんのごとく押入れから抜け出ようとするエヴァのレイなんですもん・・・。ガンダムは良く見るけど、エヴァはまだ見たことない。だのに世間はエヴァというものが神格化されてるようで、で私はそれを遠巻きに眺める人種なのであった。まあでもNHKに引き寄せられたから、「超人計画」も買ってみた。超人って、まんまニーチェのツァラトゥストラが告げる超人のことだったのか、と拍子抜けし笑っちゃいました。

この本を読んでまず驚いたのはマジで滝本さんってドラッグ漬けだったのか、ということ(笑)。文庫の最後に注意書きが書かれててウケます。でもそれよりもなによりもすこぶる感興そそられたのは、滝本さんとそれはそれは可愛い女の子とのツーショット写真。衝撃的ですね。滝本さんの得意気で満足気の笑顔に乾杯したくなります。あの写真は凡百の写真を凌駕した一種の芸術ですね・・・。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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